現地リポート

2004.08.01ボランティア 調整員の楽しみ

国名 : ヨルダン JICAヨルダン事務所調整員:遠藤賢一
シリア・イスラエルとの国境付近のローマ時代の遺跡で撮影。後方の丘はゴラン高原。

シリア・イスラエルとの国境付近のローマ時代の遺跡で撮影。後方の丘はゴラン高原。

ボランティア調整員としてヨルダンに赴任して早くも2年になろうとしている。ヨルダンでのボランティア調整員の主な仕事は以下の3点に要約される。
1)派遣されたボランティアが業務を円滑に遂行できるよう、受入れ先との間に立ってボランティアを支援すること。
2)定期的に当国の省庁、大学等から派遣の要請を取り付けて、JICA本部につなぐこと。
3)必要に応じて技術プロジェクトなどを企画・形成すること。

調整員としての仕事はさておいて、仕事を離れた楽しみについて触れてみたい。
私の場合は、当初からシニアボランティアを対象に業務を行ってきたために、彼らから学ぶことが多かった。ひと言で言うと、シニアの人たちは現役時代の経験が豊富で、具体性に乏しい抽象的な要請に対しても、相手側に応えるだけの実力を持っている。一例を挙げてみると、「品質管理」という日本人得意の指導課目がある。この国の大学教授と言われる人たちは、おおむね欧米の大学で学位を取得しているので、品質管理に関する用語は実によく知っている。彼らの話を聞いているだけで用語辞典が作れるくらいである。ところが、国内の産業基盤が弱く、従って品質管理の実践を体験している人は皆無に近い。そこをシニアの人たちは、品質管理の実際を具体的な形で提案し、実践してみせることができるので、我々調整員も安心して見ていられるという訳である。

エジプトのシナイ半島での撮影。モーゼがイスラエルの民を率いて途中立ち寄ったとされるシナイ山。頂上でのご来迎。これを称して「初モーゼ」。

エジプトのシナイ半島での撮影。モーゼがイスラエルの民を率いて途中立ち寄ったとされるシナイ山。頂上でのご来迎。これを称して「初モーゼ」。

楽しみは、自分よりは先輩格のこのような人たちと仕事を離れて語る機会が多いことである。一緒に出かけることもある。山歩きの好きなシニアがいて、よく一緒に山に出かける。
有名なペトラの遺跡。千年以上も昔に岩に刻まれた、神殿風の建造物でご存知の方も多いと思う。普通は谷底の道を歩いてこれを見上げるのだが、山の上に登って上から見下ろすのも楽しい。山に登ってみると「よくもこのようなところに」と思う場所に、先人たちが岩を削って作った階段や水路などの大昔の生活の痕跡を見ることができる。さらに驚くのは、山羊の糞がたくさん落ちていることである。つまり、千年来変わらぬ生活を守っているベドウィンが、今も山に住んでいることである。普通の観光ルートを歩いているだけでは実感できない楽しみだと思う。

これは ヨルダン南部にある砂漠に岩山があるところで、ロレンスがベドウィンを率いてアカバまで出撃した有名な場面に登場する場所です。

これは ヨルダン南部にある砂漠に岩山があるところで、ロレンスがベドウィンを率いてアカバまで出撃した有名な場面に登場する場所です。

もうひとつ観光地での楽しみを挙げると、それは「未整備の面白さ」である。案内板や便所などは十分に整っておらず、そのぶん不自由であるが野趣があって楽しい。

一方、協力隊とのつきあいで楽しいことは、数年来続いている「オルドン奨学金」という奨学制度に関与していることである。これは協力隊が中心となり、在留邦人からの寄付金をもとに、ヨルダンの苦学生に奨学金を無償で提供する活動である。(オルドンとは、ヨルダンのアラビア読みである。)支給金額は上限 1,000ドル/年で、現在3名の奨学生を抱えている。ヨルダンは国民一人あたり所得は1,800ドル前後と中進国の域にあるが、子供の数が一家に5〜6 人と多いため、学費の高い大学に進学させるのは容易ではない。だが、大学を卒業しないとよい就職口も見つからない。したがって成績のよい子供は皆進学をするが、学費が問題となる。余裕のある親戚が金銭的な援助をすることも多いが、それでも足りないぶんは伝手を頼って「オルドン奨学金」に応募するわけである。
このような活動を通じたヨルダン人とのつきあいもまた、草の根レベルの援助の一端に触れるという意味で、貴重かつ楽しいことだと思っている。