FIELD REPORT現地リポート

2019.12.04 Wed

~物語の世界と近現代の問題が同居するヨルダン・レバノン~

調査部 研究員 伊澤 朝子

~ヨルダン~

空港の外に出た瞬間、刺すような強い日差しに思わず目を閉じた。眩むような日差しに中東に来たことを実感する。 

Photo 2019_2_1 ヨルダンは、周りをシリア・イラク・サウジアラビア・イスラエル・パレスチナ暫定自治区に囲まれた中東の国である。
このように聞くと、「何か危ない感じ」という印象を持つ人も多いのではないだろうか。実際、空港周辺等での警備は物々しい印象があったが、街に出ると雰囲気は一変する。 大きなショッピングモールやおしゃれなカフェなどが立ち並ぶ街中は、華やかで和やかな雰囲気である。「中東」というと砂漠のイメージがあるが、道路も整備されており、信号はないものの日本でいうロータリーを利用して、車が行きかっている。
ヨルダンは、中東のなかにあっても、アラブ諸国やイスラム諸国だけでなく、世界各国と協調する全方位的外交を行っており、ヨルダン国内の治安は安定しているそうだ。そのため、外貨を獲得する手段としてリン鉱石と天然ガスの輸出に加え、観光に力を入れている。 

Photo 2019_2_2 塩分濃度が高く体が浮く「死海」、岩の両壁の狭い道を抜けた先に遺跡が現れる映画で有名な「ペトラ遺跡」があると聞けば、それってヨルダンにあったのかと思う方も多いのではないだろうか。映画のロケ地としても近年よく使用される「ワディ・ラム砂漠」や、キリストがヨハネに洗礼を受けたとされる「バプテスマ・サイト」やモーセが約束の地を眺めた「ネボ山」など、キリスト教にまつわる遺跡も多い。また各地にローマ時代の遺跡も数多く残っている。
私達にとっては、物語に近いそのような歴史ある土地で生きる人々は、おちゃめな人々だと感じた。毎夕ホテルでは火災報知器がなり、「また誤作動なんだ」と困りつつも面白がるような笑顔で答える従業員、道を間違えても必死に自分を売り込む運転手、鼻高々に自分の店の自慢をするウェイター。こちらに余裕がなければはっきり言って鬱陶しいような対応も、一緒に楽しむ余裕や時間を空いて振り返るとスパイスが効いていて面白い体験となった。

~レバノン~

空港に降り立ったのは夜で、海が近いと聞きながらも見ることはできず、海の気配は感じるのは、ヨルダンでは感じられなかった日本で慣れ親しんだ湿気だけであった。乾いた肌に心地いい湿気である。 

次の朝、坂道の途中にあるホテルから外へ出ると、青々とした海が飛びこんできた。地中海である。海岸沿いの道は広々としており、青い海に白い船が浮かび、カップルがのんびりと散歩する、開けた雰囲気のある街だと感じた。かつて「中東のパリ」と呼ばれる街であったことも納得である。 

Photo 2019_2_3ベイルート中央のエトワール広場周辺はヨーロッパ風の建物群が軒を連ね、その間を抜けると突如ローマ時代の遺跡が現れる。そこから少し歩くと、高級店街や現代的なシネマコンプレックスもある。レストランも多く、レバノンは食の街だと感じた。イタリアンやアジア料理(日本食まで!)様々なジャンルの食事を楽しむことができ、これがまた美味しいのである。しつこくなく楽しめる様々な味は、この国の多様さを表しているようにも感じた。  「宗教のモザイク国家」ともいわれるレバノンは、国内に18の宗派が存在し各宗派に1932 年統計の人口比に従って政治権力を分散配分している。その後、調整が行われつつも、危ういバランスの上に、現在の安定が築かれている。それぞれ宗派ごとに地域性もあるらしく、現地職員によると、どの宗派でも行きやすい場所、宗派によって行きにくい場所というものもあるそうである。 

Photo 2019_2_4

レバノンの危ういバランスを象徴するかのように、海沿いには明るい雰囲気がある一方、一本道を入ると内戦の傷跡が残っている建物が見られる。銃撃の後が残る壁が街中に残っているのである。それは、長い辛い時間を忘れないように、新しい美しいビルと対比されて佇んでいるように感じた。今後も続く、平和な日々を願ってやまない。

→写真の左がキリスト教の教会、右がイスラム教のモスク。「宗教のモザイク国家」を表している

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