HOME > 現地リポート > ベドインの村で女性の仕事を生み出す~ヨルダン~
2020.04.01

ベドインの村で女性の仕事を生み出す~ヨルダン~

調査部 研究員 林 芽衣

こんにちは。ヨルダンで活動している林芽衣と申します。
11年前にイタリアのファッション業界でキャリアを積んでいた時、ふと訪れた中東のヨルダンの美しさに魅力されました。天然の赤みがかったバラ色のグラデーションの洞窟だらけのペトラ遺跡や浮遊体験のできる死海とか、綺麗なピンク色の砂の景色の砂漠ワディラム等と、とにかく数多い見所に溢れているヨルダンです。

2008年9月に、ヨルダン南部のペトラ遺跡の側のベドイン村に移り住み、今までに全く見た事のないような貴重な経験ができました。80年ぐらい遅れたライフスタイルのベドイン民族は、何から何までとにかく面白かったです。タクシーの代わりにラクダに乗ったり、オートバイの代わりに馬やロバに乗ったり、ドアのハンドルの代わりにスプーンが刺さっていたり、車のギアの代わりにナイフが刺さっていたり。。。裸足で鼻水垂らした子供達が道端で動物と主に走り回っていたりと、本当に飽きない毎日でした。 そして、ベドイン特有のカラフルな刺繍やデザインに囲まれ、いつ かこういったデザインを使って作品を作りたいと考えていました。

そんな中、2011年にシリア紛争が勃発し、ヨルダンにも大勢のシリアの方々が避難してきました。私も内戦から逃れてきたシリア難民や、貧困に苦しむヨルダン人のために何かできないかと考え、地元のNGOなどの難民支援活動に参加し、色々な事業に取り組んできました。 内戦で家や家族を無くし荷物も持たずに逃げてきたシリアの人々は、無事に辿り着いたとしてもヨルダンで労働許可がなかなか取得できないため、収入が無く、貧困に苦しんでいます。それが、早期婚やチャイルドレーバーといった問題にも直結しています。シリア難民は、差別やいじめの対象になることが多く、また、将来への不安から、精神的にも辛い日々を過ごしています。私はこのような状況の中で、生きる目的や希望を無くしてしまった人々を、経済的そして心理的にサポートするプロジェクトを立ち上げました。

“Tribalogy(トライバロジー)”はベドインをはじめ、中東の部族文化の伝統的な洋裁技術や刺繍を基に、モダンなテイストを入れ、新しい作品に創造し、販売しています。商品はシリア難民と貧困層のヨルダン人女性が一つ一つ手作りで完成させ、それを売ることで収入の創出に繋がっています。2013年にこのプロジェクトを始めて以来、参加した女性達が笑顔を取り戻し、元気になっていく様子を沢山見てきました。自分の手で制作することに集中していると、辛い思い出やネガティブな考えが不思議と遠ざかっていきます。良い商品を作り上げ、それが売れた時の達成感、習得したスキルは今後の人生の糧になるという自信、また、たとえ僅かでも稼いだお金で家族に美味しい食事を食べさせたり、子供に洋服や勉強道具を買ってあげたりと、母親としての幸せを実感することにより、失いかけていた人生の意味を再び見出すことができるのです。

女性たちが一生懸命作り上げた商品をどんどん販売することにより、より多く仕事の数を増やすことができます。仕事の量が増えれば増えるほど、もっと多くの女性たちに仕事を提供してあげることが可能となります。

世界中の人間の優しいお気持ちと温かいご支援のお陰でこのプロジェクトは成り立っております。これからもどうぞ宜しくお願い申し上げます。

NEXT >
< BEFORE